2023年5月1日月曜日

ある後継経営者候補との話

先日、某クライアント社長から頼まれ、
社長のご子息と話すことがありました。

事業継承を考えており会社の状況を聞いてみたい、
というご子息の要望からでした。

戦略的面、管理の面、会社の風土等々、
業界共通のものや会社固有の課題・問題、
そして現在の財務状態等々について・・・

2時間程度。

そして最後に、

「『後継経営者になろう』というのは、社長も私も嬉しい。
 しかしながら、社長が継いでくれと言ったから、
 家業がずっどそうだったから・・・
 という(主体性のない)ことなら、
 もう一度よく考えた方がいい。
 自分にとって後継するとはどういう
 意味があるのかを問い直し、
 自分の意思で『継ぎたい』という決断が必要」

と、多くの世代交代を見てきたなか
後継経営者候補に私がいちばん伝えておきたい事を、
ある事例をまじえてお話したのでした。

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某社社長の息子A氏は、
入社したものの社長と喧嘩状態になり
辞めたことがありました。

社長の訃報がはいり葬儀に参列し、
そのA氏が後継することをしりました。

後日、A氏とゆっくり話す機会がありました。
「(喧嘩別れしたあなたが)戻って継ぐとは思わなかった」
と言う私に、その後の経緯をいろいろ話してくれました。
そのなか、印象に残ったところがありました。

借金が膨らみ、ましてや喧嘩別れの状態で、
先代は「継いでくれ」なかなか言えなかったみたい。
時折かかってくる電話で、先代が無言になる時が、
そうだったのでは・・

亡くなる数週間前、先代は意を決して
「お前が継いでくれ」と口にしました。

A氏は「その言葉は、無にしてくれ」と返答し、
そして「俺にやらせてくれ」と先代にお願いし、
後継を任されたのでした。

先代が入院してからの数ケ月の間、
A氏にとっては、後継を自問自答し、
その自らの後継の意味・意義に
たどり着く期間だったようです。

しばしの時間、A氏の承継した事業に懸ける思いを
私に語ってくれたのでした。