先日、農林水産大臣が米の価格高騰問題のさなか、
「米を買ったことがない」と発言し、
世間やマスコミ、そして野党から厳しい批判を受け、
辞任に追い込まれました。
この出来事はニュースとしては政治の話題かもしれません。
しかしその根底には、「リーダーとは何か」を考えるうえで、
ビジネスの現場にも通じる重要な問いが含まれていると、私は感じました。
確かに、生活者としての実感を持っていることは、
一つの大切な資質でしょう。
しかしながら、今回の騒動をめぐる批判の多くは、
少し論点がずれているのではないかと感じました。
本当に問うべきは、「米を買ったことがあるかどうか」ではなく、
「問題に対する課題解決能力」の有無のはずです。
この点について、医療の現場を例に考えると分かりやすくなります。
自らが癌を患った経験がないまま、
専門家として治療にあたる医師も少なくないでしょう。
しかし、そのことをもって
「患者の気持ちがわからない」
「治療の資格がない」と否定されることは、まずありません。
むしろ、病気への深い理解と専門知識、
そして的確な判断力こそが求められ、信頼されているのです。
リーダーも同じです。
「米を買ったことがあるけれど、課題を解決する力のない人」より、
「米を買ったことはなくても、問題を正確に捉え、
解決策を実行できる人」
という視点でリーダーをアサインしていく必要があります。
私たちは時に“わかってくれる人”、”寄り添ってくれる人」
を優先してしまいがちです。
それだけでは物事は前に進みません。問題は解決しません。
もちろん、人の気持ちに寄り添う姿勢は欠かせませんが、
リーダーにはそれ以上に、状況を打開し前進させる力が求められます。
政治的な立場に言及するつもりはありませんが、
今回の出来事は、ビジネスの現場でリーダーを
選ぶ際にも大いに参考になると感じました。
経験の有無ばかりに目を奪われるのではなく、
目の前の課題に対してどれだけの実行力を発揮できるのか――
そこにこそ、リーダーの本質があるのではないでしょうか。