本番が近づくと、不安になる。
これは人間として、ごく自然なことです。
たとえば、長い時間をかけて開発してきた新商品のリリースが、
いよいよ来月に迫ってきた。
すると、それまであまり問題になっていなかったことが、
急に気になり始めます。
「本当に、この仕様で顧客のニーズに応えられるのだろうか」
「競合商品と比べて、もう少しレベルを上げた方がいいのではないか」
「この機能も追加しておいた方がいいのではないか」
本番が近づけば近づくほど、「このままで大丈夫か」という
声が大きくなってきます。
もちろん、市場環境が変わった、競合が新商品を出した、
顧客ニーズに明らかな変化が起きた、というのであれば話は別です。
新しい事実が出てきたのであれば、当然、見直す必要があります。
しかし、そうではない。
仕様については何度も議論した。
顧客ニーズについても検討した。
競合商品についても調べた。
そのうえで、「これでいこう」と決めた。
しかも、その決定をしたときから、前提条件は何も変わっていない。
変わったのは、ただ一つ。
「本番が近づいた」ことだけです。
ここを間違えてはいけないと思います。
本番直前に湧き上がってきた不安を、
「新たに発見された問題」と勘違いしてしまう。
すると、仕様を変更する。スケジュールを延ばす。
もう一度検討会議を開く。
そして変更したら変更したで、また不安になる。
「やっぱり、前の仕様の方がよかったのではないか」
こうして、ぐるぐる回り始めます。
これでは、いつまで経っても商品は世の中に出ません。
これは、商品開発に限ったことではありません。
新規事業、設備投資、人事制度の変更、組織改革、DX、
新拠点の開設など、多くの重要な経営施策に当てはまります。
だからこそ、リーダーは、
「本番が近づけば、不安は大きくなる」
という、人間の自然な心理を知っておく必要があります。
そして、不安が出てきたときには、
「何か新しい事実が出てきたのか」
それとも、
「本番が近づいたから不安になっているだけなのか」
この二つを分けて考える。
新しい事実があるなら、立ち止まって検討すればいい。
しかし、新しい事実がないのであれば、
私はもう一つ、リーダーに大切な役割があると思っています。
それは、
部下の不安を、すべて解消しようとしないことです。
本番前の不安など、完全にはなくなりません。
「絶対に大丈夫」と確認できてから進もう。
「100%成功する」と確信できてから世の中に出そう。
そう考えていたら、おそらく永遠にその日は来ません。
そもそも経営に、100%の保証などありません。
だからリーダーの仕事は、組織から不安をなくすことではない。
不安があっても、組織を前へ進ませることです。
十分に考えた。
十分に議論した。
必要な準備もしてきた。
そして、判断したときから前提条件も変わっていない。
それでも本番が近づけば、人は不安になります。
そんなとき、リーダーまで一緒になって不安の中に入り込み、
再びゼロから議論を始めてはいけない。
誰かが前を向かなければならない。
そして最後には、こう言う人が必要なのだと思います。
「いいから、進め」
これは「考えるな」という意味ではありません。
むしろ逆です。
「考えるべきことは、十分に考えた。
だから今度は、自分たちの決定を信じよう」
ということです。
経営には、徹底的に考える時間があります。
慎重に検討すべき時間もあります。
しかし、いつかは考えることを終え、決断し、実行する時間が来ます。
そして、その境目を見極めることもリーダーの仕事です。
本番直前になれば、不安になる。
それでいいのです。
不安がなくなったから進むのではない。
不安があっても進む。
そのとき組織の背中を押す。
それもまた、リーダーの大切な仕事なのではないでしょうか。
Text reviewed and edited with support from Charlotte Grace Ashford
(AI Assistant, aka “Lottie”)