2012年2月1日水曜日

横山(安武)正太郎の死諌の建白書

年末から司馬さんの長編小説「翔ぶが如く」を再読しています。


その中に、横山正太郎の「時弊十条」という死諌の建白書
が紹介されていました(4巻 私学校)。


横山正太郎は薩摩藩の儒者で、森有礼(初代の文部大臣)の実兄です。
明治政府の堕落をなげき、太政官の集議院の門扉に
「時弊十条」の建白書を掲げ切腹し、28歳の生涯を終えました。


その建白書の内容は、以下の通りです。


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いまはすべて一新すべきときであうというのに、
旧幕の悪弊がいつのまにか新政府に遷っている。
かつて幕府に対してそれを非としたことが、
いまは新政府がそれを是としている。


というところから始まり以下十ヶ条あります。


第一に、大官以下侈靡驕奢になり、
上は朝廷をもその驕奢に巻き込み、
下々に飢餓がひろがっているというのに、
それを察しようとしない


第二に、大小の官員は、外には虚飾を張り、
内には名利を事とする傾向が少なくない


第三に、政令は朝に出て夕にかわり、
これがため人民は時代の方向を察することができない
これは要路の者が本気で物事をしようとしていないためである


第四は、旅行の費用を政治が不当につりあげている


第五は、人を用いるのに、剛直な者を尊ばず、
能者(物事がよくできる人物)を尊んでいる。
これがために日に日に軽薄の風がひろがっている


第六には、政府がやっている人事は、
官のために人を求めるというのではなく、
人のために官を求めるというやり方である


第七には、官員のあいだに酒食の交際が多い


第八に、外国と交渉して物をとりきめるやり方は慎重でなく、
じつに軽卒である


第九には、人をひきたてたり、しりぞけたりするのに、
人事上の大基準がない。多くは愛憎をもってやっている


第十には、政府の上下はたがいに私利のとりあいで、
その状態がつづけば国家はほろぶしかない。


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この建白書は明治3年のもので
今から140年以上も前のことです。


残念ながら、上記のうち半分以上が
今にも当てはまるように思います。