2014年3月3日月曜日

職人とマニュアル

俺の技能は簡単に引き継げるものではない・・・
マニュアル化なんて無駄だ・・・

とマニュアルは職人芸を否定する、
と受け止められることが多くあります。

私の、論理はまったく違います。
マニュアル化は職人の技能を際立たせるものなのです。

例えば「ステーキの焼き」を例にとって考えてみましょう。

マニュアル化するとしたら、
温度、焼き時間、ターン等々を、
シェフが実際に焼くところ見ながら、
一連の行動を計測することになります。

ストップウォッチや温度計を使って採取したデータをもとに、
「ステーキ焼きマニュアル」が完成するという手順になります。

しかしながら、ベテランシェフは
時間を計測して「焼き」を完了させている訳ではありません。

長年の経験に基づき、お肉の焼き色、
匂い、音・・等々の五感を働かせて
終了させているはずです。

微妙な焼き色、微妙な香り、微妙な焼音等々の違い、
それは長年の経験によるらざるを得ません。
その微妙な違いが判断できるところが職人たる所以です。

マニュアルの「焼き10分」は、
職人技に近いものを作ることはできるでしょう。
しかしながら、必ずしも、職人の所以たる「微妙な違い」を
保証するものではありません。

その日の、肉の質、脂分、スジの状況、
厚み、気温、湿度、季節、顧客の状況等々からすると
「あと10秒必要」「焼きすぎ」という可能性だってあります。

つまり、職人が10分程度ずっと「焼き」に携わっていたとしても、
その職人の職人たる所以である「微妙な判断」の部分は、
わずか数十秒ということになるでしょう。
この数十秒が職人の本当の価値なのです。

ならば、この重要な数十秒以外はマニュアルを使い素人に任せ、
重要な数十秒に職人の価値を注入する

という案配にすることにより、

マニュアル化は
  職人の本来持っている本来の価値を
           際立たせるものになる

というのが私の論理です。