”揺らぎ”の真っ只中

 先日、ある社長から夜に電話がありました。

業績悪化で吸収した会社の社員たちが、新しいシステムに対して
「使いにくい」「前のほうが良かった」と、

不満を口にしているというのです。

私は以下のようにお伝えしました。
「それは正常な反応ですよ。
　不満の大半は“慣れないこと”が原因です。
　携帯電話の機種を替えたとき、一週間ほどイライラするでしょう。
　あれと同じで、三ヶ月もすれば落ち着いていきます。」

組織が変化に向き合う時、最初に起こるのは“拒絶”ではありません。
古い習慣と新しい習慣が重なり合うことで生まれる
ごく自然な“揺らぎ”なのです。

電話を切った後、リビングに置いてあるギターを手に取りました。

最近始めた、茶髪の若い講師のWeb講座で、

ギターの基礎を一から学び直しており、その反復練習のためです。

長年の“我流”は心地よいのですが、
正しいフォームに改めた途端、
かつて軽やかに弾けていたフレーズが弾けなくなります。
何か後退したように感じることすらあります。

その瞬間、先ほど社長に伝えて言葉が頭に浮かびました。

「自分も今、揺らぎの真っ只中にいる」と。

この違和感こそ、古い癖がほどけ、新しい動きが芽生える予兆。
基礎練習を積み重ね、それが骨の質感にまで染み込んだとき、
プレーはこれまでとは異なる次元のものとなるのでしょう。

変わるとは、一度沈み、やがて浮上すること。
スポーツでも、フォーム矯正の途中には

成績が落ちる時期があるようです。

ビジネスも、学びも、人の成長も、
本質的には同じ構造を抱えているように感じました。
この揺らぎを受け止め、それを越えた先に、

今までとは格段に違うフェーズアップできるのだと、

改めて感じたのでした。

Text reviewed and edited with support from

 C. G. Ashford (AI Secretary, aka “Lottie”)